平成20年10月1日に、いわゆる経営承継円滑化法が施行され、その後、改正を経て現在に至っています。
経営承継円滑化法のフレームワーク
民法の特例
経営承継円滑化法の民法特例には、後継者を含む経営者の推定相続人全員の合意により、経営者から後継者に生前贈与された自社株式について、
(1)遺留分算定の基礎財産から除外する「除外特例」、
(2)遺留分算定の基礎財産に算入する際の価額を固定する「固定特例」があります。
後継者と非後継者は、後継者が経営者から生前贈与等によって取得した自社株式について、遺留分算定の基礎財産に算入しない、という合意をすることができます。
この合意の対象とした自社株式については、遺留分算定の基礎財産に算入されず、遺留分減殺の対象から外れますので、相続によって自社株式が分散することを防止することができます。
後継者と非後継者は、後継者が経営者から生前贈与等によって取得した自社株式について、遺留分算定の基礎財産に算入する価額を合意時点の価額とすることを合意することができます。
この合意の対象とした自社株式については、遺留分算定の基礎財産に算入する際、その価額が当該合意の時における価額に固定されるので、後継者は、将来の価値上昇による遺留分の増大を心配することなく経営に専念することが可能となります。
なお、合意する株式の価額は、その適正さを裏付けるために「合意の時における相当な価額」であることについて、弁護士、公認会計士、税理士の証明が必要となっています。(1)
金融支援について
相続により事業に必要な資金や自社株の散逸を防ぐためや相続税負担など会社や後継人に多額の資金負担が生じることがあります。
また代表者の死亡や退任があった場合に後継者が取引先や金融機関などから信用を獲得するまでの間、取引条件の悪化や借り入れ条件の悪化などが生じるおそれもあります。
経営承継円滑化法では経済産業大臣の認定をうける(経済産業局に申請書を提出して認定を受ける)ことによりこれらの資金需要に対する融資制度の創設拡充をおこなっています。
政府公庫特例では特に相続税への対応、遺留分減殺請求への対応への手当がなされる。
事前に認定を受ける必要があり、もちろん認定を受けたからと言って融資が必ず実行されるとは限りません。
贈与税・相続税についての納税猶予(全体像)
事業承継税制では、相続税及び贈与税の納税猶予制度を組み合わせて活用することで、相続のみならず生前贈与による株式の承継に伴う税負担を軽減することができ、将来にわたって、円滑な事業承継が可能となります。1代目の経営者が2代目の経営者に自社株式の生前贈与を行った場合には、贈与税が課税されることになります。ただし一定の要件を満たす場合には、贈与税の納税猶予制度の適用が可能となります。その後、1代目の経営者が死亡した場合には、2代目の経営者が1代目の経営者から相続または遺贈により自社株式を取得したものとみなされ、相続税が課税されることになります。
なお、平成27 年度税制改正により、平成27 年4 月1 日以後、1 代目経営者が存命中に2 代目経営者が3 代目経営者に対して再贈与を行う場合も贈与税の納税義務が免除されるよう税制が拡充されました。